「ドングリが
出来ちゅうで」
中身は転げたか食べられたか
深山の寺には栃の老木が根を張る。
◆定福寺奥の院
梶ヶ森8合目にある歴史を
1300年溯る定福寺の奥ノ院も
これから秋の色に埋もれてゆく。
「風が秋になってきた」
台風は海を攪拌し海水温を下げ
大陸の寒冷渦も次第に南下し
野山は一雨毎に秋に移ろう。
◆神の域へ
奥ノ院から上は修験の場で
ここから山道は三つに分かれて
いつも私達は渓へ下る道に入る。
山道は佐賀山谷川へ急峻に下る
山腹を横断し樹間に西の空が見えた。
「雲が早いね」
下山まで持つと思うがなぁ。
◆大岩を登る
渓底に降りた山道は
地形を成す大岩を登り返す。
渓を覆い根を張る自然の森には
秋の花が咲き早生ものが傘を開いた。
「秋は忙しいね」
生き物は長い冬の備えを急ぎ
樹々は落葉の後冬の眠りに入る。
この無心が尊いと思う。
「森が開いてきた」
◆真名井の滝
急登を登り終えた山道は
なだらかに再び渓に向かった。
やがて先人が真の清水出流と崇めた
真名井の大岩が森の奥から姿を現す。
涼しさが違ったなぁ。
「もうすぐ
お彼岸やもね」
熊蜂のうなり飛び去る棒のごと 高浜虚子
