梶ヶ森8合目にある
歴史を1300年溯る定福寺の奥ノ院。
今も祭事は続いていると聞くが
深緑に吞まれつつある様にも見える。
◆昭和の名残
「汗が変わったね」
軒下をお借りする遍照院は
かつて修験者や登山者の宿泊を担った。
空気が秋に入れ替わったな。
◆自然の域へ
奥ノ院から上流部は霊験を求める
修験者のみしか許されない聖域とされ
かつて斧を入れたことのない樹々が
根を張り枝を差し交わす森がある。
私達は今の騒動が始まる以前から
陽射しが強く暑い夏は稜線を避けて
渓沿いなど木陰を選び歩いてきた。
それは身体をいたわるだけでなく
自然変化に目を向けたい想いでもあり
人混みとか暑さが嫌いなわけではない。
真夏の稜線は変化が乏しいもの。
◆真名井谷
再び山道は佐賀山谷川に下り
ここからこの急峻な地形を成す
「真名井の大岩」を登り始める。
「栃の実出来たみたい」
サンヨウブシも咲きはじめ
これから日ごとに秋は深まる。
渓底から稜線に向かって
木段を敷かれた急登を登り返した。
◆真名井の大岩
地球唯一温帯の島国に辿り着いた先人は
自然の恵みだけで生きることが出来たので
大陸の民と違って自然を味方として暮らせた。
自然をじっと見つめる時を得た先人は
他に教えてもらわなくても略奪や殺人など
してはいけないことを学ぶことが出来た。
それは奇跡だったかもしれない。
そんな自然に恵まれた祖先たちは
感謝し祈る対象をこの大岩のような
恵みを産む自然物を神としたことは
当然のことだったのかもしれない。
秋風やことし生れの子にも吹 小西来山