猿板

遊山黒子衆SARUの記録

嵐の前の加持ヶ峰遊山 蛙の子

                             

 「ヒキガエル 何才やろう」

 5㎜足らずのおたまじゃくしが
変態し1年で6cm位に成長するが
その生存率は3%前後と言われる。

◆滝頭に上がる
 山道は落差20mの滝を成す
大岩の右岸を上がった滝頭にある
清水を塞き止めた河原にあがる。

 暑さ寒さも彼岸まで。

樹々に囲まれた滝頭の釜が
秋色を纏うのが楽しみだな。

                                           

◆渓を溯る
 標高を上げれば風が吹く
樹々はざわめくが森は静かだった。

 先回まで囀りや虫の音で賑やかだった
今日の渓に沿う道は風の音しか聞こえない。

 「解っちゅうがよ」

                                   

大脳より遺伝子で生きているから
人間が解らなくなった伝達手段で
繋がって台風が来るのが解るのかも。

 ボクもそう感じるな。

◆信仰の森
 山道が入る渓沿いに広がる平坦地は
誰かが岩と樹を配した庭園の様な風景で
ここでなんとなく覚える居心地の良さは
日本人だけが感じる事が出来るものだろう。

 「ここも落としだいたね」

自らの命を繫ぎ他の命も養う
団栗こそ絡合の象徴の様に感じる。

 ナラやろか?

                     

◆山のお寺
 緩やかに真っ直ぐ延びる
山道は古い石段を登り始める。

 「まだやね」

先人が植えたであろう山梨は
その時には少し早い様だった。

                       

 石段の果てに
深山にある寺が現れる。

 「休んで行くろう」

                 ぼんやりと浮んでをりし蛙の子  齊田鳳子