荒々しい西の肩の岩稜が現れる。
この山は瀬戸内海から駆け上がる
季節風をまともに受けることが
山名の由来になったと考えられる。
◆桑瀬峠
標高1,450mの桑瀬峠は
90年ほど前大正末期までは
高知と愛媛西条の往還の峠で
人の往来でにぎわったという。
昔の人は健脚だったとしみじみ思う。
◆山毛欅の森
なだらかな峠を後に
切り立った尾根道をすすみ
山毛欅たちの森に入る。
風が強い稜線に根を張るブナは
背が低くどっしりした樹形で
これでもかと言わんばかりに
大空に向かって枝を伸ばす。
稜線がちょうどブナ帯になる
四国型と言える姿が私は好きだ。
◆水と風の形
アップダウンを繰り返し
双耳峰の頂上部に取り付く頃
再び森を抜け笹原に飛び出す。
「着いちゅう 着いちゅう!」
この日も期待していた風景に出会えた。
山名にふさわしい寒風に生まれ
その風が空に舞い上げる霧氷。
なんて美しい風景なんだろう。
樹氷林あゆみて過去へゆくごとし 奥坂まや