猿板

遊山黒子衆SARUの記録

秋来る加持ヶ峰の遊山 秋風

                                   

 古の修験場真名井の滝の
左岸の岩に架かる鎖場を登る。
かつて人の域はここまでで
奥は神の領域だったと私は思う。

◆大岩の上
 滝頭の上の短い滝には
岩間に堆積した土砂が造った
日本庭園の様な釜がある。

 いい感じになったなぁ

木段が敷かれた急登を登る山道は
真名井の大岩の頭の一つにある
昭和の頃に作られた東屋に至る。

 「今日はそのまま降りようや」

                             

◆渓へ下る

 「やっぱり
    渓が涼しいわ」

 tochikoが先を急いだのは
渓の涼風に浸りたかったから。

 渓に流れてくる
鳥の囀りと蟬時雨は
秋の音色に変わった。

                                     

渓には今年の葉が落ちて
清水と海に向かい下ってゆく。

 ここはいい山だよ。

     「静かやしね」

◆大岩に上がる

 さあ 帰ろうか。

二十四節気は秋に入り
大陸の寒気が南下して
夏と押し合いが始まる。

また8月は台風の季節だ。

 今年の秋はどうなるのかな。

                             

「森から出ると暑いねぇ」

 そろそろ積雲が
    発達しそうだな。

◆かえり道
 高木たちは背は低いものの
光合成を待って遅く葉を開き
その樹々の葉に護られて
森に生きるものは命を繫ぐ。

                       

その死を土中の微生物が待ち
微生物の死骸も草木を養う。
森は一つの生き物の様だ。

例えば人の髪も毛根細胞の死骸だが
髪となって大切な頭部を護ることが出来る。
それらが繋がっている限り命に死は無い。

                       

なので人が考える「死の恐怖」は
自然界には無いと私は森で学んだ。
森には「我」が無いことも学んだ。

 「いい遊山やったね」

 家に近づいたころ。
西の空に積乱雲が現れた。

 今年の祭りはどうやろうね。

                     秋風やしらきの弓に弦はらん  去来