歴史を1300年溯る定福寺。
その奥ノ院は佐賀山谷川の
枝沢湧き出す深い処にある。
◆深山のお寺
いつも最初の休憩を取る
奥ノ院の宿坊だった「遍照院」は
ユースホステルとして賑わったが
この後は大地に還るのだろうか。
「サワグルミは
花も実もぶら下げる」
木の間から見える風景も
真夏のものに移ろいはじめた。
◆修験の域
さあ 行こうか。
一休みした奥ノ院から登る
古い石段と植林は程なく終わり
先は幾つかの修験道に分かれ
私たちは5年位前から
紅葉谷に溯る修験道に入っている。
その先人が神処と崇めた深い渓は
自然の領域で人は修験以外入らず
かつて斧を入れたことのない樹々が
根を張り枝を差し交わす森がある。
◆大樹の森
「ここから空気が変わる」
佐賀山谷川に下った山道は
渓底までで急峻に切れ落ちた
斜面に根を張る大樹の森に入る。
山道沿いで最も大きいカツラ。
水が好きな樹で大きさに似合わない
丸く小さい葉は芽吹きに芳香を放つ。
山道は渓底から急な斜面を這い上がる。
渓底が故に日照時間が短い渓の樹々は
陽射しを求めて天に向かい高く伸びる。
ここは鎮守の森だろう。
◆真名井の滝
急登を登り再び渓に沿った
山道は切り立った地形を成す
巨大な真名井の岩壁に至る。
「涼しいねぇ」
どこまで一枚の岩なのか。
この地形を成す岩壁を削り落ちる
滝は風と飛沫と共に落ちていた。
祖先が自然を見つめて
神と見定めたものは「調和」
日本には信教ではない真理が
ちりばめられている様に感じる。
そんな祖先が真理を求めた証
大岩に架けられた鎖場を登り
真の清水出流森を目指した。
山清水魂冷ゆるまで掬(むす)びけり 臼田亜浪