
「茂ってきたね」
自然休養林の広場として
整備された杖塚に上がった。
植物は偉いもんだな。
◆杖塚のこと
杖塚には植栽として
植えられたサツキ(五月躑躅)が
色とりどりの花を咲かせ迎えてくれた。
二週間で一気に開いたんだなぁ。

「穏やかやねぇ」
自然休養林の公園広場
いつも杖塚の広く開けた空で
雲と風向きで天気を見ている。

杖塚の空の雲は静かに流れ
薄くなって青空を透かし始めた。
今日は俄雨もなさそうだ。
「暑くもなく寒くもなしやね」

◆峠のこと
「緑のトンネルになった」
杖塚から少し引き返し
古の杣道に入り峠に降りる。

「石鎚は見えるか」
工石山を下った杣道が
降りた標高約1000mの峠には
北から穏やかな風が吹いていた。

「石鎚さんは雲ん中」
山系は寒気と暖気の雲が二層となり
石鎚山は下層の夏の雲の中におられた。
季節変わりの風景だな。

◆近道のこと
峠から三辻山北面の
植林帯を登る仕事道に入る。

「涼しくなった」
北側に切れ落ちる気圧差で
山懐から吹き上がる風は涼しい。
空気が澄んだ木洩れ陽も綺麗だ。

登山道と違う仕事道は
急な斜面を葛籠折れに登る。

「ナベワリ咲いたで」
薄暗い北面の植林にも
僅かだが根を張る草花もいる。
森の花時計も針を出した。

◆稜に乗る
「咲いちゅうろうか」
仕事道の急登を終えた道は
かつて北から上がった登山道に入る。
季節変わりの大雨もあったしなぁ。

先回から2週間経っているけど
僕も咲いているように感じるなぁ。
山道は忘れられた昭和の園地に下る。

海からの風山からの風薫る 鷹羽狩行