
あの赤い芽は山桜やおか?
高木の春紅葉はまだ先の様だが
枝先が赤くなっている木が見えた。
「そうかもしれんねぇ」
◆三辻の森
三辻山山頂部を覆う自然林には
冷温帯のブナと暖温帯の樫が並ぶ
日本でも珍しい混生樹が根を張り
共生調和しながら種を繫いできた。

自然界で「個」で生きている命は無く
「他の役に立つ」利他のものが生き残り
数億年の時を調和を保って種を繫いだ。
僕らは森に通いそれを感じ確信した。

◆芽吹きのこと
「芽吹きが始まった」
稜線の寒い北斜面の樹々が
今年も芽吹きをはじめていた。
クロモジは蕾も出しゆうな。

大地から始まる森の芽吹きは
水の吸い上げや地熱などが言われるが
僕は高木が低草木らに陽が当たるよう
待ってくれているように感じている。

祖先はその調和を見続け見定め
三万年仲良く生きて来た絡合民族だろう。

◆森の中のもう一つの森
杣道は祖先が見定め祀った
祠があった大岩の基に辿り着く。

「気持ちいい空
海も綺麗な色になった」

太平洋望むブナ林って
山が海に迫る土佐ならでは風景で
日本で希な絶景じゃないだろうか。

「はい ここでおしまい」
伐採によって風と陽を得た
僕らが真秀らと感じるところ。
これから風と鳥が運ぶものが楽しみだな。

◆かえり道
日本の複雑な地形に生きる命は
それぞれの場所に応じて生き残って
造った風景を美しいと感じられるのは
僕らに継がれた祖先の心のお陰だろう。

春に向かう季節変わりの頃は
まだ高山には固く締まった雪が残り
山に入るまでも予測と装備が必要な
最も遭難事故が多い時期に入る。

「石鎚さん見えたで」
やっぱり新雪だったな。
風も強く渓筋に残っているよ。

「河童ちゃん
小雀(こがら)!」

今季初めて姿を見せてくれたな。
またこの森で命を繫ぐ時に入った
君たちはやっぱり綺麗で逞しいよ。

「今日は寒かったろう」
「風は冷やかったけど
陽が射して温かかったで」
おでん おでん(嬉々)

「そりゃぁえいわ
特等席構えて待ちよったき」
「このお盆えいねぇ!」
今日も感謝して頂きます (^_^)

寒雀顔見知るまで親しみぬ 富安風生