猿板

遊山黒子衆SARUの記録

小暑に入る加持ヶ峰遊山 風音

                                                   

「えい風吹き上がりゆう」

 山道は深山の滝を成す
大岩右岸の急な岩盤を登り
自然森が広がる滝頭に上がる。

◆滝の頭に上がる

サワアジサイ咲いた」

 渓は植物にも水と風を運び
厳しい急峻な岩盤にあっても
生きられる命たちがいる。

 

 龍王の滝の滝頭にある
三段の滝が下る大きな滝壺が
四季折々の風景を見せてくれる。

  緑がしっぽりしてきたなぁ。

                                               

◆自然の森に入る

「渓の風は気持ちえいね」

 山道は佐賀山谷川を渡って
先人が永く関わった自然林に入る。

  せせらぎも涼を感じるなぁ。。。

 森は蟬時雨に包まれていた。

動物は地鳴りなど低い音域に恐怖を覚え
逆に高い音域に動物たちは安心感を覚え
蟬や沢が奏でる高音に人は癒される。

 かつて樹木が発散する芳香が
癒やし効果だと言われてきたが
近年この高音であるとする研究が
認められ支持されはじめている。

◆先人が居たこと
 山道に渓を挟む尾根が迫り
石門の様に左右に並び苔むした
岩の間をとおり信仰の域に入る。

   「ヤマボウシ咲いた!」

                                                 

 山野に自生するミズキ科の落葉高木。
6~7月頃に小枝の先に白い花びらのような
苞(ほう)に囲まれた頭状花序をつける。

 「今年はどこも花が多いね」

 炭焼竈や石積などを残した
先人たちが暮らすため植えたかもな。

 「山梨や栗
    クルミもそうやもね」

      

◆境内に入る
 斜面に真っ直ぐ積まれた
古い石段を登れば広く平らな
定福寺奥ノ院の境内に上がる。

 科学は思想でなく自然原理の解明。

自然を神とした僕たちの祖先は
自然を永くじ~っと見据えて
自然の中で生きる知恵を見定めた
世界でも希な民族だったと思う。

           

 渓を鬱蒼と覆った緑の中から
定福寺奥ノ院を護る遍照院が現れる。

      一本しょうや。

                    風音を過客と聞けり山法師  鈴木鷹夫