滝の音と蟬時雨を連れて
深山の滝を押し上げた大岩
左岸の急登を山道は登って
滝頭から上流の自然林に入る。
◆滝頭に上がる
龍王の滝の頭には
大岩が堰き止め出来た釜が
四季折々の風景を見せてくれる。
今日は仲夏の風景だな。
◆自然の森
佐賀山谷川に架けられた
橋を渡り流れに沿う森に入る。
ここは龍王の大岩が堰き止めた
渓水が永い年月をかけて造った
深山にある広く緩い傾斜地で
先人が永く関わった跡もある。
この森は先人の関わりにより
草木が育ちやすくなり更新された
若い木々が渓に沿い根を張っている。
◆緑の隧道
「ヤマボウシが咲いた」
山野に自生するミズキ科の落葉高木。
初夏小枝の先に白い花びらのように見える
苞(ほう)に囲まれた頭状花序をつける。
渓谷に沿う山道は
水辺を好む木々が根を張り
まだ若い木は枝を低く広げて
高木では見えづらい花にも会える。
「ヒキがおったで」
ここは四国山地の箱庭。
君らが調和する住処だよな。
◆信仰の域
次第に渓を挟む尾根が迫り
山道は石門の様に左右に並んだ
岩の間を通り信仰の域に入る。
斜面に真っ直ぐ伸びた
古い石段を登れば広く平らな
定福寺奥ノ院の境内に上がる。
手入れが途絶えたかなぁ。
境内を覆う鬱蒼とした森から
定福寺奥ノ院の遍照院が現れる。
一本しようか。
旅は日を急がぬごとく山法師 森澄雄