猿板

遊山黒子衆SARUの記録

穀雨に入る三辻山の遊山 芽吹

                       

 植林を抜け主稜線に乗る。
風が強い稜線は土壌が乏しく
リョウブやツツジなど菌根で
共生できる木々が根を張る。
◆赤良木園地

 「一本するろう」

 稜線から緩やか下った山道は
昭和の頃の忘れられた園地に至る。

   囀りが気持ちいいきね。

 「この山桜は
    まだ越冬芽やね」

 tochikoの花鳥巡礼は続いている。

    春は楽しみが長いな。

                 

◆調和する森
 三辻山の山頂部北斜面には
自然に生えたブナと樫が並ぶ
暖温帯と冷温帯樹木の混生林で
日本のブナの南限の一つとなる。

                 

2020年1月の騒動から4年間は
40年歩いてきた四国の山で厳選した
4つの山と一つの山小屋に通うことで
自然観と心の風景を深めることが出来た。

そして第二の人生に入った僕らは
その自然観と心を持って控えていた
かつて歩いた遠征を再開する事ことで
違った風景を楽しめると考えている。

                             

◆若葉のこと
 今年も三辻の森は
春の目覚めと喜びに満ち始め
また僕らのかよう道も始まった。

 「あれブナでね
   どっさり咲いちゅうで!」

 間違いない。
葉っぱだけじゃないな。

 ブナは春に葉と花を同時に開く。

    今年は表年かもなぁ。

                       

◆森の中のもう一つの森

 「杉のいい匂いがする」

 杣道を辿る山道は
この森のまほらには入る。

 伐られた杉の葉っぱは
乾いて芳香を放ちはじめる。

 子供の頃から馴染んだ
    いい香りだよなぁ。

 「あれはタカ?」

 トンビと観たがどうだろう。

 伐採で開けたから獲物が
見やすくなったんだろうな。

                             

伐採を自然破壊と言う方がいるが
自然は繋がっているから心配ないよ。
僕らもこの鳥の様に悠々と
第二の人生を過ごそうな。

                いつも来て凭る一樹あり芽吹きけり  安住敦