
登り口から見上げる空は
澄んだ秋空に浮かぶ夏の積雲が
穏やかに流れ急な崩れはない様だ。
◆登り口のこと
今日はいい汗掻けそうだな。
標高約900m登り口の気温25℃は
夏の気温だが湿度は感じさせない。
「北面の渓沿いやきね」

そこが梶ヶ森のいいところ。
「アブもブヨもおらんしね」
この前の大雨で流されたか。
さあ 入ってみるか。

◆植林のこと
祈りの山への山道は
人が植えた杉檜の林から始まる。
植林は渓に切れ落ちた斜面にあり
今日も涼しい風が吹き上がっていた。

「草紫陽花だけは
秋に咲くがよねぇ」
林床の草は雨粒を乗せている。
夕立も降りゆうみたいやね。

気象用語でもない“ゲリラ豪雨”と
災害のように読み替えられた“夕立”は
農業にも必要な自然の恵みなんだけどね。
「そうそう!」

◆岩盤のこと
植林を抜けた山道は
地形を成す大岩の急登となり
鳥や風が運んだ種が岩盤に
根を張った自然林に入った。

ママコナ咲きだしたね。
この土壌が乏しい岩場でも
花を咲かせ迎えてくれる。
「クマンバチも頑張っちゅうで」

山道は街では解らない季節の
移ろいを感じた岩盤の急登を終え
娘に化身した大蛇が棲むと伝わる
落差20mの龍王の滝の元に下った。

◆深山の滝のこと
「音が軽くなったね」
季節が秋に向かい陽射しが澄み
草木ら命の営みや音まで変化する。
秋を感じはじめたなぁ。

山間独特の俄雨があって流れが変わり
命たちは秋に向かうそれぞれ営みをはじめ
特に樹々は葉緑素を幹に仕舞いはじめる。
確かに水音が変わるよな。

今年も何も変わらない
秋が来るんだろうなぁ。。。

初秋や草をくぐれる水のおと 鷲谷七菜子