植林を抜け主稜線に乗る。
風が強い稜線は土壌が乏しく
リョウブやツツジなど菌根で
共生できる木々が根を張る。
◆赤良木園地
「一本するろう」
稜線から緩やか下った山道は
昭和の頃の忘れられた園地に至る。
頂上に上がってもうや。
赤良木園地は山頂直下にあり
低木を潜る山道を5分足らずで
標高1108mの三辻山頂に上がる。
◆山頂のこと
「雨が降ったがやね」
街では降った様子はなかったが
この時期の山の天気は別物だから
山に入る人は気をつけないとな。
「えい風吹きゆうで」
この時期の寒暖押し合う
不安定な天候のお陰と思うなあ。
今日は寒気が押して眺望がよい。
でも陽射しは夏のものに変わって
そろそろ頂上と稜線もおしまいかな。
珈琲したら森に帰ろうや。
◆混生林のこと
杣道が通る三辻山北斜面は
自然に生えたブナと樫が並ぶ
暖温帯と冷温帯樹木の混生林で
奥物部と同じく山桜が多い。
高木も低木も同時に葉を広げ
三辻の森は樹林層が二層になる。
これは四国で他にない風景だろう。
その森の木々をよく観れば
高木の幹が細いのは森が若い証で
かつて炭焼や生活の薪取りなどの
先人の関わりを感じることが出来る。
◆残されたもの
山が海に迫り平地が乏しいが
温暖多雨の恵みを受けた土佐人は
山深くまで集落を作り生きてきて
木地師が長く滞在する里も点在した。
山に生活の糧を求めた先人が
森に入り薪をとり炭を焼いた事が
自然と共生する間伐となったことを
極相林には居ない山桜が証している。
ここに自然に生えたブナと樫が並ぶ
暖温と冷温樹木が混生しているのも
先人の関わっていると私は感じている。
頂きに神を祀りて山滴る 高橋悦男