猿板

遊山黒子衆SARUの記録

早春の加持ヶ峰遊山 冬の川

                                                   

 「階段凍ってちゅうで」

 稜線を成す岩盤に架かる
鎖場の階段を登り滝頭に上がる。

 低温下の金属には要注意。

◆滝頭のこと
 真名井の滝の上の滝。
この渓谷が小さくまとまった
箱庭のような風景が僕は好きだ。

 今日は水墨の掛け軸だな。

 「珈琲タイムしょうや」

 真名井の大岩の一つの頭に
造られた東屋でいつも休んでいる。

 今日の風は冷たいぞ。

                             

◆森の中のもう一つの森

 「なかなか風えらいね」

 渓を吹き上がる雪の中
梶ヶ森のまほらへ下った。

 主稜線は大荒れやろう。

 ピタッと吹雪は止んだ。

 僕らがまほらと感じる
佐賀山谷川が出流源流点は
この山の回廊の奥にある。

 

「こんな水鏡がある
   源流点は他にないね」

 渓水が静かに流れはじめる
確かに森の中のもう一つの森だな。

◆かえり道
 山で生まれた川は海まで降りて
雲になって天に昇りまた山に還る。
その循環の中で多くの命が生まれ
養われ他の役に立ち命を繫いでいる。

                 

 何本かの渓水は岩などに妨げられ
離れたり合ったりしながら流れている。
そんな流れは滝口の処で一つになって
ドゥドゥと流れ落ちまた別れる。

「親しい人ほど距離を置くこと」

 お釈迦様は諭してくれたが
人は出会ったり別れたりして
喜怒哀楽を繰り返し生きている。

                                                   

 「足跡消えちゅうね」

 でも僕はそこに
生きている実感を覚え
それが人生なんだと感じる。

 「えい遊山やったね」

 四国は一雨で雪が消えるから
長く新雪を楽しむことが出来る。

 今日は新雪に心洗われたなぁ。。。

◆鎮めること

 「いや また来てくれたが!」

「梶ヶ森を気に入って毎月来てます」

 「梶ヶ森はえい山でねぇ
    私も昔 奥ノ院に泊まったで」

                             

 tochiko また一つ
かよう道が始まったな。

 頂きます。

   「また来てよ」

                  冬の川はなればなれに紙ながる  桂信子