落差20mの滝を成す
大岩の右岸岩盤を登り
山道は滝頭に上がる。
◆滝頭のこと
龍王の滝頭には
上部二段の滝が流れ込む
大きな釜があり四季折々
変わる風景を見せてくれる。
大岩が渓水を堰き止めた
滝頭の大釜へ静かに降りる春の雪。
なんて美しい風景なんだろう。
◆自然のこと
「ほんと淡雪やね」
山道は佐賀山谷川を渡り
先人が関わった若い森に入る。
明日にはグチャグチャだろう。
「この雪は
第二の人生のお祝いやね」
佐賀山谷川に添った山道には
温かい風が穏やかに吹いていた。
そうだやねぇ。
第二の人生はこの風景のように
シンプルな道を歩きたいと思うよ。
◆信仰のこと
山道は石門の様に並んだ岩を通り
先人が関わった信仰の域に入った。
ここは大岩が堰き止めた土砂が堆積した
なだらかな地形で石積なども残っている。
帰りは用心にストック使おうか。
ここで山道には5cm近く積雪があったが
雪質がよいためスリップすることはなかった。
「一本だけね」
「雫が凍っちゅうで」
北から寒気が押してきて
雨から雪に変わったんだろう。
これも今日の一期一会の風景。
◆境内のこと
足下気をつけよ。
渓の両側にある尾根が迫り
深山に納められた寺の石段が現れる。
「大丈夫 滑らんでぇ」
「今日の雪は優しい」
この地形で風が収束したのだろう
渓を吹き上がる雪が増えてきた。
「一本して行くろう」
雪を乗せた石段の先にある
雪が舞う森から深山のお寺が現れる。
あったかいもの飲みたいな。
美しき生ひ立ちを子に雪降れ降れ 村上喜代子
