猿板

遊山黒子衆SARUの記録

山納めの三辻山遊山 冬枯

                             

 植林を抜け主稜線に乗る。

風が強い稜線は土壌が乏しく
リョウブやツツジなど菌根で
共生できる木々が根を張る。

◆忘れられたこと
 稜から緩やかに北に下る
山道は昭和の頃の園地に至る。

 この東屋も森に還るだろうな。

 「頂上行くろう」

 今日は海が見たいね。

                       

◆山頂のこと

 「風がないね」

 標高約1100mの山頂には
穏やかな陽射しが注いでいた。

 峠の風が嘘みたいやな。

                             

 足下から土佐湾に下る山並は
冬の靄で美しいシルエットとなり
その先に斜陽に輝く海が見えた。

 小春の一期一会だな。

 さあ 森に帰ろうか。

◆まほらのこと
 三辻山の山頂部北斜面には
自然に生えたブナと樫が並ぶ
暖温帯と冷温帯樹木の混生林で
互いに共生し森を成している。

                       

 葉を落としたブナが天に枝を広げ
残った雪がサクサク音を奏でる杣道。

 これらも今日の一期一会。

 

 草も樹々も枯れて幹や枝は裸になり
ひっそりとながい冬の眠りの中にある。

 枯れという自然の設えも格別だなぁ。

 山道は森の中のもう一つの森に至る。

伐採で変わった森のまほらに生きる草木は
全て受け止め新年も迎えてくれるだろう。

 「はい 今年は終わり」

◆かえり道
 この山域は三辻山北面の
原生林以外は植樹された林で
以前の調和を失ってしまっても
新しい種が調和する様を見てきた。

                 

破局噴火や全球凍結などで大量絶滅しても
永い時をかけて現在の生態系を回復した
地球の自然は人が思うほど弱いものではなく
まして伐採など人為的な関わりは些細なことだ。

そんな自然に人の「保護」など必要なく
先人のように頭を垂れて学ぶことこそ
後の世代の為には有意義なことだと思う。

           

 「今年もいい遊山やったね」

 そんな健康でいられることが
何よりの幸せなんだろうなぁ。。。

                枯といふこのあたたかき色に坐す  木内彰志