「ここも真っ白ちろ」
やはり稜線は風が強かった。
特には山頂は風が吹き上がり
雲も架かりやすい処だから。
◆天辺のこと
森から雪煙となって
舞い上がる雪は綺麗だった。
これも一期一会
森に帰ろうかねぇ。
◆自然林のこと
三辻山の頂上部にある森は
自然に生えたブナと樫が並ぶ
暖温帯と冷温帯樹木の混生林で
双方が調和して森を成している。
落葉した樹々は枝に
常緑樹は葉の上に雪を乗せる
この森だけの雪化粧だろう。
「静かやねぇ」
空気を多く含む雪は
音を閉じ込め雪が降ると
森は静寂に包まれる。
ここは風が弱いから
森に降る雪が葉に落ちる
微かな音を聞く事が出来た。
◆森の中のもう一つの森
湿雪が乗った枝や葉が
重さで垂れ下がった山道は
この森にのまほらに入る。
「別の世界やね」
風も雪も空気も変わる処。
他の山にもまほらは必ずある。
ここは森の中のもう一つの森。
そんな温かい処を探しながら
第二の人生も歩いてゆきたいなぁ。
さあ 帰ろうか。
◆かえり道
「雪が鳴いてる」
柔らかい湿雪の層は
踏むとキュッと音を立てる
今年初めてやな。
時に災いをもたらす雪も
頭を垂れて懐に分け入れば
温かい音や色で向かえてくれる。
「猫バスが来た！！」
そんな人間の想いは無関係な
自然は完全中立の存在だから
曇りのない眼で見てくれる。
「いい遊山やったね」
今年冬の出足は遅かったけど
これが今年の一期一会だろうな。
さあ次はどこに行こうかね。
かぎりなき雪道我を帰さざる 阿波野青畝
