猿板

遊山黒子衆SARUの記録

初秋の奥物部の森遊山 蟾の子

                             

 過去幾度も土砂崩れにより
通行止めになった西熊林道も
今年は大雨による影響はなく
40年通う森の登り口に着いた。

◆登り口のこと

 「アブもいないね」

静かな登り口の気温は19度
気温が下がったせいもあるが
大雨は多くの命を流してまう。

 「虫食いが少ない」

 もうすぐ虫の季節が終わる。
今夏は雨の日が多かったからなぁ。

 さあ 行こうか。

                             

◆草のこと

 「木陰は涼しいねぇ」

 奥物部の森へ分け入る山道は
昭和に整備された林道から始まる。

 昔は暑かったな。

     

この林道が出来た頃には
道沿いの木々も伐採されて
陽射しを遮るものがなく
夏は大汗掻いて歩いていた。

日本は都市でも更地にすれば
すぐに草ボウボウになる様に
大気中に大量の種子が浮遊し
その地に適したものが根を張る。

                     

◆動物のこと

 「猪が掘ったがでねぇ?」

猪は強い鼻と牙で地面を掘り起こし
根や球根、ミミズや昆虫も食する。
そんな猪を先人は山を耕す神とした。

それは土を掘り大地に空気を送り込み
植物らの生育を助ける働きを担う為で
草木が育てば生態系が形成される事を
祖先はきちんと見定めていたのだろう。

                      

 そんな命達が絡合し
調和した山に護られた祖先は
恵まれた民だったと思う。

 猪は偉いよなぁ。

◆季節のこと

 「これは
    花じゃなくて萼でぇ」
そろそろヤマアジサイは見納めで
山の花は秋のものに移ろいはじめる。

                             

 花の一部で
   いいんじゃない(笑)

 

 海に囲まれ雨に恵まれて
複雑な地形に多様な命が生きる
島国日本に生まれたことは
本当に幸せな事だと思うなぁ。

                             

 蟇(ひきがえる)闇のつづきの山負うて  桂信子