猿板

遊山黒子衆SARUの記録

小暑に入る三辻遊山 空蝉

                                                           

 「朝顔に釣瓶とられてもらひ水」

井戸の釣瓶に絡みついた朝顔蔓を切るには
忍びないので近所に水をもらったという
戦国城主妻の日本人らしい心の俳句。

◆分け入る

 「濃霧やね」

 静かな登り口は気温23℃。
山歩き程度の運動発汗なら
十分放熱ができる気温だろう。

街に居ると不快に感じる
湿気も自然には必要なもの。
風通しのいいウエアなら
霧が程よく放熱してくれる。

                                         

◆林道のこと
 三辻山への山道は
昭和の頃廃坑となった
鉱山に続く林道から始まる。

人が関わった環境に根を張った
草木の初夏の花は実を結び
延ばした葉は先まで凜として
雨上がりの姿が美しい。

 

 人の自然への関わりは「悪」だと
環境を唱える方々は仰っている様だが
僕らが35年山を歩いたの経験では
その様には感じない。

                       

◆人工林のこと

 「静かやね」

 山道は林道から人が植えた
杉ヒノキの植林を登る道に入る。

 霧が音まで包みこむようだな。

咲きはじめた真夏の花は
暑い稜線にはない風景だろう。

                   

人が関わり生まれる調和があり
単調な植生に至った極相林より
種の多様性を言うのであれば
人が関わった方がいいと思う。

 究極の自然保護は
人が居なくなることじゃない。

                 

「しっかりつかまちゅう
     これなに蝉やろう」

 夏の蝉かなぁ
うれしい風景だよなぁ。

◆二次林のこと
 山道は凜とした植林を抜け
山道は公園整備した植生に
鳥と風が運んだ種が根を張った
草木が共生する二次林に入る。

 霧に覆われた森の
視界は10m位だったろうか。

                 

薄明かりに浮かぶ樹々の雨粒。

 何て美しい風景なんだろう。

 「杖塚上がるろう」

      雲に入りたいね。

                     空蝉に雨水たまり透きとほる  篠原梵