猿板

遊山黒子衆SARUの記録

晩春に入る三辻山遊山 日向

                       

 植林を抜け主稜線に乗る。
風が強い稜線は土壌が乏しく
リョウブやツツジなど菌根で
共生できる木々が根を張る。

◆忘れられたこと

 一本しょう。

 稜から緩やかに北に下る
山道は昭和の頃の園地に至る。

 「今日は黒滝峰行こうや」

 ここは落ち着く処やな。

今春も始まった花鳥巡礼は
この見えない山桜も追い始める。

 「ここはあと一月やね」

                             

◆混生林のこと
 三辻山の山頂部北斜面には
自然に生えたブナと樫が並ぶ
暖温帯と冷温帯樹木の混生林で
互いに共生し森を成している。

 「鳥も賑やかになった」

得られる食物の量と植生に応じ
そこに生きられる種の数が決まる
自然は利己でなく利他で成ってる。

 僕らが支持するメーカーも
機能は自然現象(身体構造)に
色合いは自然に近づいてきたもの
自然に頭を垂れた結果だと感じる。

                                         

◆共鳴すること

 囀りが近づいた。

繁殖期に入った鳥たち
特に雄は広範囲に飛び回る。

 tochikoは鳥笛を鳴らす。

僕は反応している様に感じた。

 「来た!来た!!」

                                   

ヒガラの名の由来は諸説あるが
日のスズメとした祖先の心が
僕は何となく解る気がするなぁ。

◆杣道のこと
 工石山南山麓を発った杣道は
この山域の主稜線南北を這い進み
ここから東の参勤交代の峠に下る。

 

そんな山中を歩く道で
この祠のあった大岩は
時に激しく変化する森で
確かな道標になったろう。

                 

 苔むした古い石積の道を
僕らはこの森のまほらと感じる
森の中のもう一つの森に入ってゆく。

                  日向ぼこして雲とあり水とあり  伊藤柏翠