猿板

遊山黒子衆SARUの記録

仲秋の加持ヶ峰遊山 落葉

                                                           

 「今年もどっさり葉っぱ」

 トチは沢山団栗落として
沢山の葉も落としてくれる。

 土中の命も喜んじゅうろう。

◆定福寺奥ノ院
 6億年前出来た多細胞生物は
「利他的」で生き残って来たが
200万年前大脳が1000ccを越えた
人間だけが「利己的」になった。

結果「力が強いものが偉い」で
他国は侵略、戦争を繰り返し
日本人はそうならなかったが
決して善、悪などではない。

                             

◆修験の域
 奥ノ院で一休みしたのち
信仰の域の最後の石段を登り
修験場がある原生の森に入る。

再び渓へ降りる山道の先には
かつて斧を入れたことのない
樹々が根を張り枝を差し交わす
原生自然の森がある。 

 「サンヨウブシが実になった」

 ウバユリも重そうに実を垂れ
草木はその時代の気候に合った
四季の変化を毎年見せてくれる。

                      

◆渓の底

 「今年は紅葉が遅いね」

 山道は鉄製の橋を渡り
佐賀山谷川の渓底に降りる

 それが今年の特徴だろう。

 「樹のざわめきが乾いた」

山道は地形を成す大岩を登り返し
渓の下りに沿って根を張る森に入る。

 森が季節変わりを告げている。

                                           

 秋雨前線を伴う低気圧の発達で
森の上から強い風の音が聞こえ
木々が身を揺らしざわめいていた。

 稜線は大荒だろうなぁ。

◆権現の大岩
 大岩の急登を終えた山道は
なだらかに佐賀山谷川に向かう。

                 

源流に向かう山道の先に見える
まだ葉を茂らせた木々の中から
先人が崇めた巨大な岩盤が現れる。

 登り口からそそり立ち標高を上げる
大岩の連なりの最後で稜線を成している
この幾多の木々を纏う真名井の大岩こそ
信仰の山梶ヶ森の本質だろうと思う。

                 岨(そば)行けば音空を行く落葉かな  太祇