猿板

遊山黒子衆SARUの記録

中秋に入る三辻の遊山 秋の雨

                             

 山間部の複雑な地形は
湿った空気がぶつかりやすく
ぶつかれば雲となり雨が降る。

 これも局地的な収束帯。

◆杖塚のこと

 「傘要らんくらいやね」

昭和の自然休養林の公園施設
杖塚に降る雨は優しかった。

 開けた杖塚の空を流れる雲は
緩やかで時折薄陽が射していた。

 この気温で速乾ウエアなら
これ位の雨は気持ちいいかもな。

                 

◆杣道のこと

 「やっぱり気持ちえいで」

 杖塚から少し引き返して
杣や木地師が往来した峠道に入る。

 小降りになったかな。

この杣道は四国山地主稜線近くを
南北幾つかの枝道が交わりながら
東は安芸の山まで続いたと聞いた。

 「あんたも雨が嬉しいろう」

                                         

 自然に頭を垂れ良材を見定め
ろくろを巧みに操った木地の器には
どんな造形を削り出していたのだろう。

◆峠のこと
 杣道は標高約1000mの
赤良木峠に出て風景が広がる。
昭和に鉱山として拓かれる前は
どんな風景だったんだろうなぁ。

 「えい感じやね」

 北に山麓を覆う雲の海を纏う
東西に連なる嶺北の山並の向こうに
石鎚山とその山系が姿を見せてくれた。

 「なんと山の多い国だろう」

四国山地を見た深田久弥さんの言葉。
山多く合間を複雑に渓谷や川が流れる
四国らしい風景が心に残ったのだろう。

           

◆近道のこと
 峠から入る三辻山への近道は
杣の道を離れた植林作業道を歩く。

 いまウッドショックに加え円安で
国内材に目が向けられていると言う。

 森林率84%全国一位の高知県
杉檜の伐採作業が目に付く様になった。
僕はこの機に日本に木造建築が増えれば
祖先の様に温かく暮らせる様な気がする。

     

 「この蔓の巻き方面白いね」

 杣人の様な林業が盛んになれば
風通しも良くなり植生も増えるろうな。

                 しづかなる音かさなりて秋の雨  山口青邨