猿板

遊山黒子衆SARUの記録

中秋に入る三辻の遊山 釣舟草

                       

 山間から降りはじめた雨は
登り口に着いた時に上がった。
見上げた空の雲は穏やかに流れ
今日は降ったり止んだりだろう。

◆登り口のこと

 「涼しくなったね」

 登り口の気温は21度。
優しい変化の風吹く曇り空。

 アブの季節も終わりかな。

 「釣舟草咲いたね」

 ツリフネソウは仲秋の季語
花言葉の「安楽」は解るなぁ。

 シシウドも弾けたで。

                   

◆林道のこと

 「静かやねぇ」

 三辻山への山道は
廃坑に続く林道から始まる。

 この天気じゃなおさら。

 濡れた葉や秋の花が
曇り空の優しい陰影に浮かぶ。

 雨止み間の風景はいいなぁ。

                     

 もちろん晴れもいいけど
僕らはその合間の変化のとき。
そんな一期一会を求めたい。

◆植林のこと
 山道は昭和の林道を別れ
人が植えた杉檜の林に入る。

     

 ここでの一期一会は残花。

 満開を追えば慌ただしいが
残花に美を見ればゆとりが出来る。

 

 それは自然を見据えた
先人が得た「侘び寂」での
再生への期待のように思う。

                 

◆二次林のこと

 「ルリしか鳴かんね」

 山道は公園整備された後
鳥や風が運んだ種が根を張り
調和した若い二次林に入る。

 止まって鳴くルリと違って
木々を飛び回って囀る小鳥らは
雨が降るから嫌なんだろうな。

 そんな自然に向かう二次林は
極相林より多くの命が棲んでいる。

                     

 「杖塚行くろう」

 雨が来たから
傘差して上がろうや。

                明け暮れの揺れを絶やさず釣舟草  渡井ふじ子