猿板

遊山黒子衆SARUの記録

処暑の三辻の森遊山 法師蟬

                       

 「ツクツクボウシ
   上手に鳴きはじめたね」

 蟬時雨のしんがりを務める
法師蟬が夏の終わりを告げていた。

◆赤良木園地

 「落ち着くね」

 いつも昭和の園地で休憩する。
この忘れ去られた園地に流れる
法師蟬の音色のなんと綺麗なことよ。

◆三辻の森
 三辻山の北斜面にある森は
自然に生えたブナと樫が並ぶ
暖温帯と冷温帯樹木の混生林。 

           

それは緯度と標高の結果だが
温暖繰り返してきた地球気候の
瞬きにも満たない時間の中にあり
命はそれに合わせて移ろうだけだろう。

永久凍土から見つかった3万年前のライオンを
温暖化によって凍土が溶けたと結ぶ人がいるが
その頃暖かかったことを示しているのではないかな。
今の地球は氷河時代にあることは現実なのだから。

◆日本人は天を祀らない
 自然が豊かで超越神の存在がなくても
生きていかれた日本人が目に見える物
自然に「神霊」が宿ると考えたことは
アジアでも珍しい独自の神意識だった。

                 

自然をジーッと見て何が正しいか
それぞれが見出した日本人には
意見の対立が多かったことは
訪れた他国の人も記録している。

◆大きな橅の木

 「今年の実りはどうやろうね」

地面に落ちたブナのドングリは
人が食べても美味しいもので
片っ端から動物に食べられる。

                                                   

そんなブナは数年に一度の大豊作で
動物たちも食べ尽くすことができず
発芽するチャンスを作っていると
言われるがそれも仮説でしかない。

僕はブナも樹々は森を観ている様に思う。
狼が捕食で草食動物の数を調整するように
結実で命の数を調整しているのではないかと。

 森で「自分だけ」では生きてゆけないから。

◆深く分け入る
 この森の最も深い処に導く
道しるべの様に葉を広げるシダ。

 これって一枚の葉っぱだよ。

                 

そんな森には苔むした石が積まれた
古の木地師や杣人が歩いた道がある。
僕らがこの森に覚える安心の様なものは
継がれた遺伝子が感じるものだろう。

                   鳴き移り次第に遠し法師蝉  寒川鼠骨