夏を耐えた樹々が葉を落とし
森のまほらを護る様にどっしり座る
祠のあった大岩が姿を見せ始めた。
◆森の中のもう一つの森
「まほら」とは
「マホ(真秀)」に漠然と
場所を示す意の接尾語ラの
付いた優れたよい所の意。
「蟬時雨止んだ」
僕がこの森のまほらと感じる
森の中にあるもう一つの森は
今日は涼しい静寂の中にあった。
◆秋の兆し
「見て!
出来ちゅうで!!」
双子の栃の団栗だな。
「栃は裏表ないきね」
「これ今年の栗でね」
栗は表裏年あったはず。
「見て見て!
枝に茸が生えちゅう!!」
ここは本当に
不思議な場所だよなぁ。
さあ 帰ろうか
◆かえり道
順番を守って鳴く蝉も
季節を違えず渡る鳥たちも
街で感じなくなった季節の移ろい。
40年山を歩いてきて感じたこと。
人も自然も全て過去で出来ているから
自身にもあるか解らない明日を案ずるより
目覚めた今日を懸命に生きていればよいこと。
「ミンミン蝉も
だいぶん渋くなったね」
和尚さまの心地よい
読経の様にも聞こえるなぁ。
宇宙全ての命は劣化する運命にあるから
有性生殖で命を繋げるようになってから
死は最上の幸せになったように感じる。
「沢山命に出会えた
いい遊山やったね」
さあtochiko
第二の人生が始まるな。
籠らばや色なき風の音聞きて 相生垣瓜人