猿板

遊山黒子衆SARUの記録

梅雨晴間の奥物部遊山 瑠璃鳥

                          

 「オオルリ見つけた!」

 晩春から飛来するヒタキ科の夏鳥
高く澄んだ美声でピールリと囀り続ける。
古くから鶯・駒鳥とともに三鳴鳥と言われた。

◆音色のこと
 なわばりを持つルリの雄は
渓流沿いの岩壁の窪みなどに
コケを用いた巣を護るために
木の梢で豊な声量で囀ると言う。

毎年この頃の奥物部の森は
他の繁殖期を迎えた囀りや
雨が海に下るせせらぎに満ちて
その音色に僕らは癒されている。

                     

◆森のこと

 「この山桜も大きいでねぇ」

毎年多くの花を咲かせてくれる
極相林にはいないヤマザクラ

 林道ならではの風景やな。

 奥物部の春は「一見二千本」と言われた
ヤマザクラの開花とともに始まっていた。
それは先人が炭焼や薪取りなど材木利用の
森と絡合した関わりを保っていた証だろう。

 今の四国でこんな森はないだろう。

 社会の変化と共に奥物部の森は
自然に添った調和に還ってゆくのか。
それを通い見据えたいと思っている。

◆実ること

 「アサガラの落花」

 エゴノキ科の落葉高木。
春の末多数の白花を垂下する。
果実は倒卵形油を採る。アサギ。

                                 

 落花も秋の実も森の命を養う。

昔ヌル谷でヒメネズミが
花を抱えて食べてたなぁ。。。

 「キイチゴはもうすぐ」

これは人が食べても美味しいもの。

 野茨も咲いて秋に実をつける。

                      

◆林道の果てへ
 南北に切り立つ山が迫り
いつもの林道が終点に近づくころ
私たちがかようまほらが見えてきた。

 「賑やかになってきた」

 深く切れ落ちた渓底から
増水した渓のせせらぎと共に
蟬時雨や囀りが吹き上がってきた。

 気持ちいい音色やな。

                  瑠璃鳥の色のこしとぶ水の上  長谷川かな女