古の峠道に至る林道を別れ
渓に下る山道で奥物部の森に入り
ここから森は自然の域になる。
◆長笹谷
山間にあり日照時間が短い渓は
風も強く葉が大きい木は生えづらく
渓に沿う樹の紅葉は淡い色になる。
「えい色やね」
これも渓の風景だろう。
今日も紅葉を映す秋水は
海に向かって下ってゆく。
◆渓を渡る
渓底に降りた山道は橋を渡り
林道対岸のカヤハゲ山腹に入る。
山道はカヤハゲの南斜面にあり
日当たりも良く紅葉も鮮やかになる。
◆斜陽射す
時々雲間から射す斜陽が
紅葉を輝かせ背景を黒く塗る。
この風景を見に来たんだなぁ。
渓からカヤハゲに上がる
山道はザレた急斜面を登り
対岸の白髪山の紅葉が見える。
奥物部の今秋は淡紅葉。
これも今年の一期一会だろう。
◆水が造ったまほら
急登を終えた山道は
山腹を横切りヌル谷に沿い
この森のまほらに分け入る。
雨期を終え渓水は伏流している。
山道は渓水が永い年月流した土砂が
堆積した森の平坦地ヌル谷のナロに入る。
山を削り地形を造り森の命を養う
海から還った水の力を感じる場所を
私たちはこの山域で幾つか知っている。
「休んでいくろう」
草にふれ秋水走りわかれけり 中村汀女