猿板

遊山黒子衆SARUの記録

穀雨の奥物部遊山 散る桜

 tochikoが楽しみにしている
山桜の開花に今年は遅れたようで
広げたばかりの葉桜が迎えてくれた。

 これが今年の一期一会だろうな。

◆葉桜のこと
 かつて奥物部の春は「一目三千本」
と言われた山桜の開花で始まっていた。
しかしそれは戦後の木材需要期に
この森が伐採された証でもあった。

                                           

◆自然であること
森の失われた処にパイオニア的に生える
山桜は根の競争に弱く森が回復すれば
その役割を終えて静かに姿を消してゆく。

今この山域に追い詰められた鹿のため
再び森が失われつつある奥物部の森は
鹿も食料が無くなれば姿を消すのだから
山桜たちが傷を癒して森が回復するだろう。

けれどもそれは私が会う事は叶わない
永い時間を要して回復してゆくのだから
樹々と比べて寿命が極めて短い人間の
「自然保護」に何の意味があるのか。

                                                   

◆春紅葉のこと
 春から若葉の初夏に移ろう
奥物部の森の新緑は林道から始まり
一雨毎に山頂に向かい登ってゆく。

 「対岸の見頃は
    GWからやろうか」

 そうやね。
来週まとまって降るみたいやし。

                 

まだ観ることが出来る
あの淡い色合いの春の紅葉に
今年も森を染めてもらいたいね。

◆山桜のこと

 「長笹の渡渉にも
     山桜があったね」

 その辺りに
咲いた山桜が見えゆうで。

                                                   

 複雑な山の地形に生きる草木が
一斉に芽吹いたり花を咲かす事は希だ。

 間に合えばいいね。
いやきっと間に合うと思う。

 山道は桜の元に続いている。

                     散る桜 残る桜も 散る桜  大愚良寛