樹々が吸い上げた水が
蒸発する際大気の熱を奪うが
数十mまで吸い上げる仕組みは
まだ解明できていない。
◆森に入る
白髪山の北側山麓に
昭和の頃拓かれた林道は
終点に近づいてゆく。
その終点手前にある
道しるべを長笹谷に折れ
奥物部の森にはいる。
◆渓へ下る
白髪分かれ直下より出流
上韮生川支流長笹谷に山道は下る。
「えい風が吹くね」
風は谷筋をとおり道として
頂上部や稜線に吹き上がり
日没で風が変わることもある。
◆カヤハゲに入る
山道は里人が架けた橋を渡り
カヤハゲ(東熊山)に登り返す。
急峻な道を登り詰めると
渓から吹き上がる風を感じる。
この渓風も樹々には必要なもの。
今日も渓を護るように根を張る
樅の大木が私達を迎えてくれる。
◆ヌル谷のナロ
山道は尾根を巻いて
長笹谷に下るヌル谷に入る。
「鬱蒼としたね」
私達が30年通い学んだナロは
渓が運んだ土砂が長年かけて
滞積した奥物部の森の平坦地。
「東屋で一本しょうや」
万緑や木の香失せたる仏たち 伊藤通明