古の峠に続く林道に
両側の山が迫る終点近くでも
陽が高くなり光が射しはじめた。
◆森に入る
林道終点手前の道標から
長笹谷に下る山道に入り
奥物部の森に分け入った。
◆渓に咲く
白髪分かれより出流
長笹谷は新緑の風も流していた。
「咲いちゅう!」
深い谷底に根を張った
山桜は満開の若葉と花で
私達を迎えてくれた。
花衣の願いが叶ったな。
渓に群れ咲くミヤマカタバミも
木霊の様に揺れ私達を迎えていた。
◆渓を渡る
杣人が架けた橋を渡り
カヤハゲの山懐に入る。
「花びらが流れゆで」
花筏とまではいかないが
これも今日の一期一会だろう。
渓から急な斜面を登ると
白髪山北面の森が見えはじめる。
「北面は新緑も遅いね」
気温か保水力が落ちたせいか。
今年は全体が遅れている様に感じる。
◆まほらへ
急登を終え門番の様に立つ
樅の大木の根元からヌル谷に入る。
30年を越えて通い見つめてきた
森のまほらの下草と土壌を失った
大木達はこの先どうなってゆくのか。
それもこれからtochikoと共に
見定めてゆきたいと思っている。
ただいま 帰ったよ。
遅桜見に来る人はなかりけり 政岡子規