私達の山行での休憩は
決まった間隔で取ることなく
気持ちがいい場所で腰を下ろす。
また荷の重さも考慮している。
◆深く分け入る
吹き返しで樹々がざわめく
ヌル谷を後にテン場へ登り始めた。
「道が川になっちゅうね」
森に道を掘れば水が流れ
更に土壌を守る草木を失えば
雨水は一気に流れ下るため
この様に深く掘れてしまう。
◆森の母
ヌル谷の源流には
tochikoの森の母がいる。
彼女はずっと見上げてきて
母も温かく迎えてくれる。
今日も「おかえり」て声が
どこからか聞こえた気がした。
◆山懐に入る
台風一過の吹き返しで
ちぎれた雲は雨と日差しを
共に降らせることがある。
温帯低気圧になったな。
tochiko出た出た!!
ここでは少なくなったけど
秋の実りが生えはじめたよ。
私達は登山道を離れ
忘れられた杣の道に入った。
普段は伏流している水で
好きな酒を冷やせる湧き水も
台風が運んでくれたもの。
これも秋の旬だろうと思う。
「ここ最高ですわ!!」
さあTommyさん 腰を据えるよ。
◆月見の宴
tochikoが焚火をはじめた。
植物の食べ物は二酸化炭素。
樹々も喜んでいるだろう。
暗くなる前に寝床を構える。
経験と道具は使ってなんぼだよ。
森と料理とお酒と
お喋りを楽しむこの一時。
「街では無理ですわ」
いつからか焚火みなくなったね。
楽しい時間は早いもの。
いつの間にか陽は落ちていた。
「お月さん出たで!!」
今日は十二夜の月。
きっと森の生き物たちも
こんな月を観ているんだろうな。
時々弾く焚火の音と
沢の音が今宵のBGM。
なんて
贅沢な時間なんだろう。
月よりも雲に光芒十三夜 井沢正江