猿板

遊山黒子衆SARUの記録

初秋の奥物部の森遊山 蟬の殻

                                                       

 かよう間に一度建て替えられた
この東屋にも色んな人や風景の
思い出がたくさん詰まっている。

◆森の中のもう一つの森
大人は焚火を囲んで酒を酌み交わし
子供らは夜の暗さ怖さ楽しさを体験し
四季折々変化する自然の命らから
多くの気付きと学びを共に頂いた。

山頂だけを見ていた僕らが
出会った「ヌル谷のナロ」は
登山だけでなく人生そのものを
変えてくれたように感じている。

 

◆源流へ溯る
 この森のまほらで休んだあと
ヌル谷が出流処に根を張っている
tochikoの森の母に会いに行った。

 この原生の森に通い始めて
人の活動により住処を奪われた
鹿らがこの森にも集まりだして
風景はゆっくり変わっていった。

そんな人の関わりも含めた変化を
誰よりも近くで多くを観られた事は
僕らの運命だった様にも感じている。

                                           

◆Mother tree

 「団栗出来ちゅうろうけど」

 支流の源流にある母の樹は
万緑を纏いtochikoを迎えてくれた

 大きすぎて下から見えんねぇ。

 「見て見て 落ちちゅう!
   鹿の足跡もどっさりあるで!!」

 橅の様に実りに裏表年がない栃は
毎年沢山実をつけて命を養ってくれる。

                     

 「沢にも沈んじゅうね」

渓水は酸素を多く含むから
水没しても死ぬことはない。

 コロコロ流れる形やな。

 

 「柞の森は母の森」

沢山咲く花は蜜をつけ実になって
大きな樹の下には多くの命が集まる。

 栃は森のお母さんだなぁ。

◆かえり道
 全ての命は遺伝子が継いだ
記憶だけで生きていけるはずだが
人間は立ち上がって大脳が発達し
その記憶が見えなくなってしまった。

 「今だけ 金だけ 自分だけ」は
一代限りの大脳が考えることで
生き残った遺伝子が繫いでいるのは
他の命と絡合し調和する術だと思う。

                                   

僕らが山を長く歩いて感じたことは
脳が喜ぶより身体が喜ぶことこそが
もっとも大切なことだと森で感じてきて
森の命もそれで生きて来たと思っている。

 今年の柚子はどうやろう?

「いっぱい付いちゅうらしいで」

 そりゃぁ よかったねぇ!

  頂きます。

                                                   

 空蝉やいのち見事に抜けゐたり  片山由美子