曇空から霧雨や日差しが降る
古い林道の風景を楽しみながら
1時間ほど歩けば終点が近づく。
◆森へ入る
かつての峠道に続く道から
谷側に下り長笹谷へ降りて
私達が通う奥物部の森に入る。
「久しぶりですわ」
◆長笹谷
樹々の向こうが白く光り
渓を下る水が奏でる低い音が
山が迫る谷間に響いてくる。
水量を増し気泡で白濁した
渓水が流れる長笹谷に降りた。
一本しょうや。
高層の風は渓とは違う。
上空の巻き返しの雲は大きく早い。
「稜線は強風やね」
大きいものは遅く見えるもね。
◆渓を渡る
杣人が架けた橋を渡り
カヤハゲ山懐を登り返した。
ザレた急登を登り終え
上韮生川支流のヌル谷に入る。
急な斜面の尾根を巻き通い続ける
この森のまほらヌル谷のナロに入る。
◆ヌル谷のナロ
いつもは穏やかなヌル谷も
この日ばかりは白く流れていた。
山の平坦地も今秋の長雨で
至る処に水の流れが出来ていた。
これも追われた鹿が集まり下草を失い
保水力がなくなった事によるものだ。
「休んでいくろう」
靴紐も結び直そうかね。
顔ふつて水のうまさの山清水 河野南畦