猿板

遊山黒子衆SARUの記録

三辻山晩夏の遊山 杉花

                       

 山の最も深い処に近づいて
吹き上がる風は木洩れ日を揺らし
涼しげな蟬時雨と囀りが流れてきた。

◆格別なところ

 「はい おしまい」

この稜線の窪地にある「まほら」
森の中のもう一つの森に辿り着く。

 今日も賑やかだな。

 以前の北面周回の帰路は
今は伐採で出来なくなったが
杉が伐られたなら善しだろう。

 さあ 帰ろうか。

                                                               

◆木を刈ること
 杉は伐られても生きていて
建材など姿を変えて人と共生し続け
後の命を育てる人に感謝していると思う。

木を焼いた煉瓦で家を建てた他国と違い
日本人は木と草と土を活かして家を立てた。
それは善し悪しでなく生まれた風土の違いで
島国で生まれた祖先が至った知恵だと思う。

           

そして不安定な太陽に左右される気候変動を
生き延びるため今より気温が高かった平安時代
京都でも雪が降らなかったため建屋の周りに
回廊を巡らす寝殿造を生み出したのも知恵だろう。

◆かえり道
 時に激しく変動する環境で生き残るため
地球の命たちは世代交代などで変化して
絡合による調和を保ちながら命を繋いで
出来ないものは淘汰されたのだろう。

そんな調和は全て生き残るではなく
時に自らの犠牲も伴うこともあるが
それも自然として受け入れることが
温かい人生に繋がると僕は思っている。

                 

 「いい遊山やったね」

 そうやね。
夏の疲れが癒やされたなぁ。

 命に囲まれるっていいな。

                  千年の杉の花粉を浴び詣づ  滝峻石