猿板

遊山黒子衆SARUの記録

三辻山晩夏の遊山 油蝉

                                                                   

 「これ何キノコ?」

 よく見かけるけどなんだろう。

茸狩りは行く山の食用菌だけ覚えて
他に手を出さない事が長生きの秘訣。

◆赤良木園地
 山道は主稜線に乗って程なく
忘れられた昭和の頃の園地に至り
蟬時雨と鳥の囀りに囲まれた。

 鶯が本調子になったな。

 「これはアブラゼミやね」

かつてテーブルやベンチもあった
園地は緑に埋もれる東屋だけ残り
やがてこれも大地に還るのだろう。

                             

◆三辻山の森
 自然に生えたブナと樫が並ぶ
暖温帯と冷温帯樹木の混生林は
ブナの南限の一つになっている。

 無数の命が調和した混生林では
寒暖だけでなく極相林では見ない
草木や虫らも調和しているのは
祖先の関わりの名残りだと思う。

           

それは都市に人が集中した
現代だからこそ貴重な調和で
環境問題を唱えるとすれば
この森も見てもらいたいな。

 

◆万緑の頃
 二十四節気大暑に入れば
樹々の緑が深まり生命力に溢れ
それぞれの命を春に繫ぎ始める。

 「いつ見ても立派な木やね」

 

木が水を吸い上げる術は不明だが
葉で水を蒸発させる事は解っていて
水は蒸発する際に気化熱を奪うので
緑濃い大暑が夏で最も森が涼しい節。

◆深く分け入る
 森の深い処に導く道標の様に
今年も大きく葉を広げたシダ。

                 

 苔むした杣道を支える石積。

 僕らはこの山道が
本当に好きなんだろうなぁ。

 蟬時雨も囀りもついてくる。
祠のあった大岩が護る森のまほら。

 ただいま帰りました。

                  やがて死ぬけしきは見えず蝉の声  芭蕉