東海に抜けた低気圧の発達で
北から流れる込む雲の動きは速く
時折雲の切れ間から青空が覗くが
日本の高山は荒れているだろうな。
◆雲を観る
「雪止んだね」
太平洋の暖気が押し始める
春の天気はこの様なものだろう。
寒気押す秋より怖いかもな。
◆渓へ下る
渓を挟む両側の山が迫り
郷境の峠道に至る林道を別れ
奥物部の森に分け入る山道に入る。
山道は渓を深く刻んだ
上韮生川の支流長笹谷へ下る。
「増水しちゅうねぇ」
岩にぶつかり白い飛沫を上げ
渓水はゴウゴウと流れていた。
杣が架けた橋を渡るとき
四季折々変化する風景に囲まれ
海へ還る渓水を観るのが好きだ。
◆山懐に入る
「ネコノメが咲きそろった」
これも森に春を告げる
スプリング・エフェメラル。
慎ましい佇まいがいいね。
「最後の登りですね」
山道はザレた急斜面を登り返す。
もうすぐ
この森のまほらですよ。
「白髪山が見える」
急登を終えてふり返る。
冬の主役になってくれた
いい山なんだけどなぁ。。。
雪を降らせた雲が去り
南に白髪山がどっしり座った。
四月らしい天気だな。
◆まほらに帰る
「ただいま」
吹き上がる渓の風から
森を守るように根を下ろす
樅の大木がまほらの番人。
「いつもはこんなに
流れてないがよ」
山道はヌル谷に沿い平坦となり
その先に35年かよったまほらがある。
にぎやかに水の押し合ふ春の川 有山洲彦