標高約1000mの登り口から
見上げた空には山を越えた雲が
足早に南に向かって流れていた。
◆登り口のこと
「誰もいませんね」
登り口の気温は7℃であるが
吹き下ろす風があり体感は5度以下。
寒の戻りですからねぇ。
「稜線はどうやろう」
風は強そうだし
不安定だから心配だね。
◆林道の咲くら
「やっぱり
咲いちょった!」
登り口近くにある山桜は
特徴はないが何故か気になる桜。
今年も間に合った
しかも満開の姿にな。
こっちもいい感じだ。
何も咲くらは桜だけじゃない。
今年もスミレや柳も咲いてくれた。
「ハシリドコロも咲いた」
山中陰地に自生するナス科の多年草。
有毒で錯乱状態になるのが名の由来。
春の主役が揃って咲いた。
◆雨上がりの林道
昨日までの雨で増水した
岩清水は飛沫を上げて流れ落ちる。
「今まで見たことないかも」
対岸に目を向ければ
カヤハゲから出流ヌル谷が
白蛇となって渓へ下っている。
「いいですなぁ」
日本列島は隆起と崩壊を繰り返し
今の複雑で美しい地形の風景に至った。
その主役は世界屈指の降雨なんだろう。
◆寒気の一期一会
「あれ雪でねえ?」
寒気が下りてきたようで
稜線は強風で雷も注意だろう。
春の雪が来た。
北から稜線を越えた雪が
私達が歩く林道にも降りて来た。
この時期の雪は珍しくはないが
躑躅に降る雪は初めてかもなぁ。
この様な高山に守られた山麓と違い
風を受ける稜線の変化はもっと激しく
立夏の頃までは気象遭難が多くなる。
今春の極端な寒暖差が
開花を早め寒気を遅らせて
この一期一会を見せてくれた。
「名残の雪やおかね」
再びの名残の雪と思ひけり 高木晴子