白髪山山麓にある林道は
しだいに両脇の山が迫り
終点に近づき渓は深くなる。
◆渓へ下る
古の峠道に入る終点手前で
奥物部の森に続く山道に入る。
ここからは渓が削り落とした
急斜面の下りと登り返しがある。
◆長笹谷
「アイゼン無しで大丈夫で」
渓へ下る道も新雪でエッジが効くが
山側に身を傾けず真下に体重をおろし
怖がって腰を引くことはしないように。
「一本しょうや」
山道は長笹谷の河原に下る。
河原は大小様々な岩を雪が覆うため
隙間などに足を取られない注意を要する。
風の通り道の渓は雪が深く
雪が降れば景色が変わるため
無雪期に何度も通って道を覚える。
そんな冬の渓は危険な処だ。
◆渓を渡る
河原で休んでいる間に
登り返しの滑り止めを装着した。
この箇所は渓底に向かって
急峻に切れ落ちているため
滑り始めたら止めるのは困難だ。
明らかな危険箇所は事故が少なく
無雪期でも何でもないところこそ
危険が潜んでいると考えた方が無難だ。
何とか無事に登り終え
歩いてきた対岸の森を見る。
「綺麗ですね」
雪山は危険予測が困難だが
怖がって避けてばかりでは
この風景には会えないよな。
かぎりなき雪道我を帰さざる 阿波野青畝