猿板

遊山黒子衆SARUの記録

小暑に入る加持ヶ峰遊山 余花

                             

 加持ヶ峰(梶ヶ森)1,400m
その8合目にある定福寺遍照院は
古くは信仰心厚い修験者の宿坊として
昭和にはユースホステルとして賑わった。

◆定福寺奥の院

 「ここも茂ったね」

向こうが見えなくなったが
空は明るくなっていたようだ。

 さて 行くか。

 「山の躑躅も終わりやね」

 初夏に山間や北国で見られる
まだ咲き残っている桜を余花と言う。

 これも躑躅の余花だろうな。

                                                                   

◆渓へ下る
 奥ノ院からは修験場に続く
幾つかの道が分かれていて
今日も渓を追う山道にはいる。

 「何か困っちゅうで」

甲殻類、短尾亜目に属する節足動物の沢蟹。
季語としては夏の水辺で目にすることが多い。

 確かにそんな顔してるなぁ

                      

 山道は急峻な地形を成す
真名井の大岩を下る渓に降りる。

その渓沿いは陽を求め大木となった
木々が立ち並び手付かずの森を成す。

 

◆大岩を登る
 山道は古の修験場にむかい
急峻な大岩の斜面を登り返す。

     

 日本各地の神社を見ると
大昔から巨石信仰があったことを伝え
岩が持つ不動性、普遍性から信仰心が
育まれたと考えられている。

急登を終え落盤帯に入れば
青葉交える木々の背後から
真名井の大岩が現れる。

◆真名井の滝

 「涼しいねぇ!」

大雨で増水した真名井の滝は
水飛沫と風を巻き下っていた。

                                                   

「真名井」とは神聖な井戸のこと。
古来日本人は清水湧き出すところを
神聖な場所として大切に祀ってきた。 

 稜線を持ち上げる
大岩に架かる鎖場の梯子を登り
大岩が清水を堰き止めた造った
この山のまほらに分け入る。

                 

余花といふ消えゆくものを山の端に  大串章