飛沫く深山の滝から
滝の音と蟬時雨を連れて
滝の上にある森に登った。
◆滝頭に上がる
龍王の滝を成す
大岩が堰き止めた渓水が
永い年月をかけて造った
自然の森に分け入る。
◆緑の隧道
この森は先人の関わりにより
草木が育ちやすく更新されて
渓に沿って若い木々が根を張っている。
「ヤマボウシが咲いてる」
山野に自生するミズキ科の落葉高木。
六~七月小枝の先に白い花びらのように見える
苞(ほう)に囲まれた頭状花序をつける。山桑。
渓に沿う山道には
水辺を好む木々が根を張り
まだ若い木は枝を引く伸ばし
高木では見えづらい花に会える。
ここは四国山地の箱庭。
「ここにも落花」
◆聖域へ
山道は次第に谷筋を離れ
道端の木々の隧道となる。
四国でこの様な処は他に見ない。
急に石をついた石段を登り
定福寺奥の院の境内に入る。
「またツツジが蕾をだした」
これも人が植えたものだろう。
休んで行こう。
梶ヶ森8合目にある遍照院は
歴史を1300年溯る定福寺の
修験者の宿坊とし建てられた。
汗が気持ちよく感じたのも
もちろんウエアの進歩もあるが
渓を昇ってきた風のお陰だろう。
「囀りと蟬時雨も
気持ちよかったもね」
旅は日を急がぬごとく山法師 森澄雄