猿板

遊山黒子衆SARUの記録

夏至に入る加持ヶ峰遊山 蟬時雨

                             

「若葉が一人前の青葉になった」

 太陽が最も高く昇り
昼が一番長く夜が一番短くなる。

 二十四節気夏至に入る。

◆森を見る

 「今日も静かやね」

 登り口の気温は23℃。
今日は多少ムシムシした体感だが
谷をとおる涼風に期待している。

◆分け入る

 「春蟬が鳴き出した」

吹き上がる沢音が運んでくるように
「ゲーコゲーコ」と春蟬の声が聞こえる。

 山はまだ初夏の音色やな。

                     

 初夏の花は実を結びはじめた。
この命の移ろいに先人たちが感じた
「侘び寂」は再生への期待だろうと思う。

 

 「こんまいの
    隠れちゅうで」

お前さんも雨を待ちやろう。

                                         

◆じねんの森
 山道は植林を抜け自然林に入り
蟬時雨に賑やかなミソサザイが加わった。

山地に生息する非常に小さい鳥。三十三才
渓流ぞいの藪や岩のある林などに生息する。

 この鳥たちも養っているのは
二酸化炭素の炭素で体を作る植物。
もし地球に二酸化炭素がなかったら。
生命が誕生していないのは間違いない。

                      

 私は満開もいいけど
虫食いや落花も好きな変わり者。
その様なものに目が向くから

 ちっとも先に進まない(苦笑)

 

◆深山の滝
 渓の音が大きくなり
山道は深山の滝の元へ下る。

 サワアジサイが咲いた。

沢などに群生するユキノシタ科の落葉低木。
7~8月頃に白色の細花を多数散形につけ
周囲の装飾花は碧色または淡紅色・白色。

                                                           

 「水は増えてないね」

大蛇に化身した娘が棲むと伝わる
落差約20mを流れ落ちる深山の滝は
夏らしい深い緑に包まれていた。

 滝の釜が開けた空には
雲が稜に向かって流れていた。

 まだ梅雨が終わりませんように。

                     やがて死ぬけしきは見えず蟬の声  芭蕉