「これは山桑やな」
桑はクワ科の落葉高木で
実ははじめ赤色でやがて七~八月に
紫黒色に変じて熟す。多汁で甘い。
◆分け入る
「梶ヶ森は雲の中」
いつもの登り口でY'sと
マタギKさん歯医者さんと落ち合う。
変化の風吹く気温15℃のスタート。
「気持ちよぉ
歩けそうやな」
風がとおる谷筋やきね。
◆人の森
「ここばぁ間伐したら
雑木も生えらぁ」
「炭焼の子」と言うマタギKさんは
子供の頃から植林も経験してきた。
先人は野生と里の緩衝地帯として
植林を置き上手く棲み分けして生きて来た。
それは現代科学はとても及ばない長い観察で
私はそれこそ真の自然科学と思っている。
「雑木の炭焼き跡に
杉を背負うて植えよった」
◆自然の森
植林を抜けた山道は
若葉が繁る自然の森に入る。
落葉時期に大地に陽が届く
自然林の植生は植林と違う。
「栃葉人参やね」
山中の陰地に自生するウコギ科の多年草。
地下茎は竹類に似た節を有し横走。
夏淡緑色の小五弁花を散形花序に多数開く。
囀りに渓音がとどき始め
山道は深山の滝の元へ下る。
◆龍王の滝
大蛇に化身した娘が棲むと伝わる
落差約20mを流れ落ちる深山の滝は
永い年月をかけて大岩を溶かし下る。
あんまり水が増えてないなぁ。
しかし滝に取り付く苔も草木も
緑濃くなりよい佇まいとなった。
これが今日の一期一会だろう。
写真を撮り終えた
仲良しさんはお喋りに夢中。
さあ行いくぞね。
黒く又赤し桑の実なつかしき 高野素十