猿板

遊山黒子衆SARUの記録

小暑に入る加持ヶ峰遊山 滝風

                       

 山頂は流れる雲の中にある。

湿った空気は山にぶつかり雲になる。
だた今の風は弱く独立峰の梶ヶ森は
午前中雨に変わることはなさそうだ。

◆雲の中

 「誰かおったら
   どうしに来たがって感じ」

今日も静かな登り口の気温は22℃。
谷筋は風があるようで涼しく登れそう。

霧に覆われる林の中から
気持ち良さげな蟬時雨と
鳥の囀りが聞こえていた。

                       

◆分け入る
 山道は杉檜の植林から始まる。
斜面の底を流れる佐賀山谷川から
涼風と共に蟬時雨が吹き上がる。

 「この前の蟹やおか」

水は全ての生命の源で
これまでのまとまった雨を
喜んでいる様に見えるなぁ。

                                   

 雨上がりの草木も活き活きして
短い梅雨を補う雨は有り難いものだ。

 沢蟹は沢山いるからね。

                       

◆自然の林
 山道は鬱蒼としてきた
雑木林に入り登りは急になる。
ここは岩盤で木々は根を深く張れず
大きく育つのは杉ぐらいだろな。

 いつのに頃作られたのか
様々な大きさの石を敷いた道は
濡れても角が効いて登りやすい。

                                                       

 山道は大蛇に化身した
娘が棲むと伝わる落差約20mを
流れ落ちる深山の滝の元に下る。

◆深山の滝
 水は時間をかければ
どんな物質も溶かすことも
また雲となって空に浮かぶことも
粒子がとても小さいから出来ること。

 「涼しいねぇ」

勢いよく落ちる水が風を起こし
岩に当たった飛沫と共に下る。

 大雨のあとだからな。

     

川は酸素や大地の有機物も運び
山里は勿論海の命も養ってくれる。
その水は太陽エネルギーによって
雲となって再び山に還ってくる。

海から天に昇って山に還る循環を
先人は龍に例えて後に伝えてくれた。

 自然から謙虚に学んだ
日本人は賢い森の民だと思う。

                             

滝風に吹かれ上りぬ石たゝき  飯田蛇笏