「杖塚寄っていくろう」
この日太平洋の暖気は南風
大陸の寒気は北風となるため
雲の動きを見ればそれが解る。
◆杖塚
休養林の広場として整備された
南向き斜面にある杖塚は空が開き
天気を観て休むにはいい場所だ。
雨に遭わずにすみそうやね。
◆赤良木峠
杖塚から少し引き返し
工石山登山道を別れ峠道に入る。
この道はかつての木地師の道で
遠く津野山郷まで続くと言われる。
山と山との鞍部となる峠は
風が集まり雲と共に吹き抜け
峠に近づく毎に霧は濃くなった。
「頑張って張ったね」
山道は標高約950mの峠に出る。
峠はドロマイト採掘により開けたが
かつては城下と本山郷との往来があり
茶屋があり木地も市を開いたと聞く。
◆近道に入る
変化の風が吹く峠から
三辻山に登り返す植林帯は
長く間伐されず放置されている。
戦後焼け野原となった復興に
大量の木材が必要とされて
多くの山主が長者番付を占めた。
当時の里山の人達も
子孫のため雑木を刈り炭を焼き
背負い上げた杉檜の苗を植えたが
育つ頃には外材が入り売れなくなった。
また植林は30年で刈られて花咲くことなく
材に出来ない部位は割り箸や紙に使っていたが
「森林保護」や「もったいない」を唱える
「再生紙」と「マイ箸」がとどめを刺した。
伝統の林業を衰退させ
多くが花粉症に苦しむ我々は
いったい何をやっていたんだろう。
ただよへるものをふちどり杉の花 富安風生