猿板

遊山黒子衆SARUの記録

最後の桜追う三辻遊山 蝮蛇草

                       

 「茂ってきたね」

 自然休養林の広場として
整備された杖塚に上がった。

 植物は偉いもんだ。

◆杖塚のこと
 杖塚には植栽として
植えられた躑躅の仲間たちが
鮮やかな色合いで迎えてくれた。

 「今日は静かなねぇ」

 躑躅が終われば夏山シーズン
ここも登山者で賑わうだろうな。

                 

 杖塚の開けた空には
南から変化のときを告げる
雲がゆっくり流れ始めた。

 そろそろ行くかな。

◆峠のこと

 「ここも
    緑のトンネル」

 杖塚から少し引き返し
古の峠に続く杣道へ下りた。

                 

 「石鎚は見えるか」

南の風が吹き抜ける
赤良木峠に下り着く。

 頭だけ雲に隠れてる。

 雨雲は1800mから上を流れ
こちらも雲底が暗くなってきた。

◆近道のこと
 峠から三辻山北面の
植林帯を縫う近道に入る。

                             

戦後植えられたと思われる
植林は伐り時を迎えているが
今伐られている南面の伐採が
ここまで来ればいいがなぁ。

 「ナベワリ咲いたで」

 薄暗い北面の植林にも
僅かだが根を張る草花もいる。

                      

 「テンナンショウも立ち上がった」

人間と共生する杉は間引きなどして
40年で伐らないと苦しくて花を咲かせ
悲しい花粉症の原因となっている。

 

◆稜に乗る

 「ぜったい咲いちゅうで」

 山道は植林帯を葛籠折れに
急勾配で登って登山道に入る。

                     

 先回から2週間経って
僕もきっと咲いていると思うな。

 山道は忘れられた昭和の園地に下る。

                つややかに首立ててをり蝮蛇草  青柳志解樹