鳥の囀りと共に陽が下る。
それは雨上がりを予知するでなく
雨雲の様子が解る何らかの手段を
鳥が持っている様に私は感じている。
◆鳥曇
昨夜から雨雲レーダーを眺めて
奥物部の森の雨の降り方を予測していた。
ひょっとしたらこの森に棲む鳥たちも
私と同じ画像を見ていたかもしれないな。
◆渓を渡る
山道は深く切れ落ちた渓へ下る。
樹々が葉を茂らし空を覆う前の
沢を下る水が奏でる音は軽く感じた。
杣人が架けた橋を渡り
白髪山からカヤハゲの懐に入る。
この下にある落差55mの滝は
周囲に水飛沫を上げて命を養う。
その水と日光を求めて枝を広げた
樹々も芽吹きが始まっていた。
◆山の懐
山道は長笹谷を渡り
カヤハゲの懐に登り返す。
鋭角に切れ落ちた渓が多く
対岸の景色が近く見えるのも
この山域の特徴だろう。
今日は霧に浮かぶ
樹々のシルエット向こうの
ベールを纏う森が美しかった。
◆森のまほら
山道はヌル谷のナロに入る。
ここはヌル谷が永い時をかけて
土砂を運び造った森の広い平坦地で
20年前までは笹や草に覆われていた。
人に住処を追われここに集まり
大地の草を食べ尽くした鹿は
群が餓死するまで食べ続け
頭数を調整することが出来ない。
その数をずっと調整したのは狼など
肉食動物であることは間違いないが
その役割を担ったものはもういない。
自然は食物連鎖も調和が取れていた。
しかしそれは100年足らずの
寿命の人間が嘆くことではなく
地球や宇宙で繋がっている自然は
また長い年月をかけて調和を保つだろう。
林道の山桜や躑躅も咲いたし
春紅葉の盛りまで少しの間があるな。
さあ雨になる前に帰ろう。
わがえにし北に多くて鳥曇 八木澤高原