猿板

遊山黒子衆SARUの記録

tochikoの栃の話

kurokoshusaru2006-02-24

 もう15年以上経つでしょうか
ある秋、物部村の「綱付け森」からの下山中の事でした。
 堂床分岐にさしかかろうとした時、
目の前に、ボタボタと何かが、音をたてて落ちてきました。
頭の上にも、背中の上にも、コツン、コツンと・・・。
足元に転がったそれを拾い上げると、
栗の実を丸くしたような可愛らしい木の実でした。
 見上げた親木は、堂々と枝葉を大きく広げ、
黄色く色づいた葉は、天狗の団扇のようでした。
帰りに笹温泉のご主人に尋ねたところ、
それは「栃の実」であると教えて下さいました。

 蕎麦を練る木鉢が栃で作られていることや、
笹の栃蜜の話、花の写真etc・・・
その事がきっかけで、栃へ思いが膨らみ始めました。
そんなとき樹齢400年を超える栃の大木との出会いがありました。
私がご神木と名付けたこの木は、
今も「ヌル谷」の上流部で王者の風格を漂わせています。
 大きな枝をしっかりと四方に広げ、
幾星霜を生き延びた、その姿に心をうごかされました。
 根の部分は、沢にむき出しになっているために削られ、
背後は、森林伐採の為に風当たりが強くなっていますが、
去年の秋も沢山の実を落とし、
鹿や猪たち森に生きるものの生きる糧になっています。
 栃は、人間にとっても古くから関わりのあった木で、
トチ餅を代表に、おかゆ、菓子類にも利用しますが、
独特に苦みをとる「アク抜き」に一月ほどかかる事が難点です。
はこね鉢や椀に、皮は染料に、葉は防腐剤の代わりに・・・
日本の雪深い地方では、「木地師」の手によって加工され、
森も大切に守られてきました。
 四国のわずかな自然林の中にも栃の木は多く、
四季折々の変化に出会えます。
他にも、「四国カルストケヤキ平や、越裏門の山中家住宅、
物部村久保の影の韮生川に張り出した木なんかも素敵です。
 四季それぞれに栃の思い出は尽きませんので、
折々このブログに書きたいと思っています。