登り口がある木馬茶屋は
かつて炭などを馬で運ぶ人夫たちが
休む場所であったと里人に聞いた。
「綺麗な雲ですなぁ」
◆平家伝説の里
標高400mの登り口は9℃
放射冷却で下がったことを考えると
やはりこの時期としては暖かい。
変化を告げる羊雲だな。
御在所山の名は各地にあり
この山は安徳帝を奉じて落ち延びた
平教盛がこの地の大屋敷に居を
構えたことに由来するとも言われ
安徳屋敷跡や二位尼の観音菩薩が
地中から出現した伝承がある山里。
「静かですなぁ」
◆静かなこと
「ホダギが増えたね」
住むものが居なくなった
集落跡地では銀杏や椎茸などの
農作がひっそりと続いている。
道端の花を咲かせた枇杷や
ほうきや縄にしたシュロが
かつての里の暮らしを伝える。
養蜂も現役だな。
街の人が祠と間違う養蜂箱。
「ニホンミツバチやおかねぇ」
◆頭を垂れること
段々畑にある鳥居と祠は
今も供えを欠かしていないようだ。
敷かれた落葉と相俟って
これもいい佇まいだなぁ。。。
縁起物の南天やオモトにも
幸を願う里人の心を感じる。
◆分け入ること
平家観音像が掘り出された
畑跡に立つ立派な石碑を過ぎれば
緩やかに登った里道の終点に近づく。
里道の終点にある民家。
僕らが初めて訪れたときには
老夫婦が確かに暮らしていた。
その民家の庭先を抜け
山頂神社への山道に分け入った。
故郷に墓のみ待てり枇杷の花 福田蓼汀