猿板

遊山黒子衆SARUの記録

晩秋に入る三辻遊山 螇蚸

                       

 標高約900mの登り口の空には
陰影ある雲が静かに北西方に流れ
着いた時には小雨が舞っていた。

◆登り口のこと

 「降りはじめやね」

 静かな登り口の気温は14℃。
今日は暖湿流で湿度ある様だが
汗掻いても寒気で気持ちいいかもな。

 「ツリフネのお花畑」

 牧野先生が名付けた草花は
鈴生りに下げた花を揺らしていた。

                             

◆林道のこと

 「雨 感じんなった」

 山道は昭和に廃坑となった
鉱山に続く林道からはじまる。

 今日は降ったり止んだりやろう。

 「足と羽が欠けちゅう!」

 半年足らずの生涯を
懸命に生きた時をその身に刻み
葉にしがみつくバッタに出会った。

                     

 先人が見据えた「侘び寂」って
きっと再生への期待なんだろうなぁ。

◆植林のこと
 山道は林道を別れて
工石山に続く登山道に入り
杉檜の植林に分け入った。

 「ツリフネの実
     初めて見た」

他の役に立たない命はない。

 これミズヒキの実かな。

                      

それは人間の未熟な脳で考える
食物連鎖など浅い結果ではなく
利他的でないと生き残れなかった
自然の根幹だった様に感じる。

◆二次林のこと
 人工林を過ぎた山道は
人が公園整備したのち鳥や風が
運んだ種が根を張った二次林に入る。

 この地の今の気候も地形も
地殻変動と不安定な太陽により
未来永劫同じではないことは
過去をふり返れば誰でも解ること。

                     

目の前にある森が極相に至っても
それは一過性でしかないのだから
生物は進化と絶滅を繰り返して
いまの時代の調和に至った。

 

 ここも紅葉が始まったな。

                             

 「杖塚上がるろう」

   雨の様子を観たいね。

                   しづかなる力満ちゆき螇蚸とぶ  加藤楸邨