「山は違うね」
登り口から見る空には
雲底暗い雲が足早に流れていた。
今日も午後は注意だな。
◆登り口のこと
「今日も一番乗り」
標高約900mで気温13℃に
季節変わりを感じることが出来た。
僕らが早いだけやろう。
「こんな実ながやね」
小さなさやまめを弾かせて
釣船草は増えてゆくんだろう。
◆林道のこと
三辻山への山道は
昭和の頃に廃坑となった
鉱山に続く林道からはじまる。
その林道に根を張る草木らは
それぞれ実を結び越冬芽を出し
命を繫ぐ営みを見せてくれた。
祖先が見据えた風景
「侘び寂」は秋と春に
目と心にとまる様に感じる。
◆植林のこと
昭和の林道を別れた山道は
人が植えた杉檜の林から始まる
工石山への登山道を歩きはじめる。
子供の頃の草の実と言えば
衣服にくっついて嫌だったけど
大人になり山を歩きはじめてから
愛おしく感じられる様になった。
きっとそれも僕らの祖先が
遺伝子に残して下さった心を
山を歩き自然に分け入って
見えてきた様に感じている。
◆二次林のこと
「紅葉来たね」
植林を過ぎた山道は
人が公園整備したのち鳥や風が
運んだ種が根を張った二次林に入る。
モミジの様な鮮やかさでない
それぞれに違う葉が織りなす
色合いに深い風景を感じる。
「杖塚行くろう」
今日は雲読みが大切だな。
金のなる木などと空しき草の実よ 山口青邨